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2.気にせずにいられない料理
うちの会社の社員食堂は、定食のところと、麺類のところと、カレーや丼ぶり物のところの、三つのコーナーがある。
このうちの、カレーや丼ぶり物のコーナーで出されるものがおいしくない。今月から人が変わったからだ。
僕は、お店などでおいしくない食べ物に出くわすと、なぜかもう1回それを食べてしまう傾向がある。何かの間違いだったのかもしれないと思うのだ。
昼休み、僕は今日もこのコーナーに並んだ。すでに習慣化しているかもしれない。
丼ぶり物もカレーも、日替わりでメニューが変わる。
僕は親子丼と漬けマグロ丼とスパイシーチキンカレーの2回目を食べなければいけないのだが、今日も別のメニューだ。
でも、別に構わない。人が変わったのは今月からだから、まだ食べてない日替わりメニューが割りとある。それを食べればいい。
今日の日丼ぶり物は天丼だ。ここの天丼は初めて食べる。
「今日は天丼か?」
「鈴木さんもカレーですね」
鈴木さんも、今月以降、毎日カレーや丼ぶり物のコーナーを利用している。いつかおいしくなるかもしれないと思って、つい利用してしまうのだそうだ。
ちなみに、今日のカレーはビーフカレーである。
「天丼はどうだ?」
「まあまあです。天丼はご飯と天ぷらにつゆをかけるだけですから」
「それもそうだな」
「カレーはどうですか」
「いつも通り。一週間に1回か2回くらい、うまい日があるんだけどね」
「その日だけ別の人が入ってるんですかね」
僕らは天丼とカレーを食べながら、昼休みの社食の様子を観察していた。混んだ社食の中で、カレーや丼ぶり物のコーナーには人が少ない。
「毎日カレーと丼ぶり物を食ってるのは、俺達くらいだよな」
俺達にしかできないことだと、鈴木さんがしみじみ言う。
「僕は毎日ではないですけど…」
「でも、週に3日か4日は食ってるだろ」
カレーと丼ぶり物は手軽なのだ。恐いもの見たさとか、おいしくないものが好きとか、そういうことではない。
でも、なんとなく気になるのは確かだ。
つい、引き寄せられてしまう。
こういう集客方法も、世の中にはあるのかもしれない。これを作っている人にしかできない集客方法…だ。多分。
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