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「という、夢を見たのさ」
古岡の壮大な一人語りに、俺は、へーと応じた。
あの後──現実世界に帰ってきた俺たちは、混乱する古岡からゲームと延滞料金を問答無用で徴収し、『レンタル遊戯』へと戻った。転売の元締めに関しては警察に相談したところ、丁度、別件でお縄になったと知らされた。
ゲームに閉じ込められる悪夢を見た、と言いながら、古岡は自主的に『レンタル遊戯』でボランティアを始めた。
といっても客が頻繁に来るわけではない。
気になって店に顔を出す俺を捕まえては、こうしてくっちゃべっている。
カウンターの奥から出てきた夏目が、目を光らせた。
「その辺、まだ埃残ってるよ」
「はい! 喜んで!」
古岡が生き生きしている。まあ、こいつはこういうやつだ。夏目の話によると案外真面目にやっているらしい。良かった。
俺は店の棚に目を走らせた。
「さて、何か借りようかなぁ」
「このへんがお勧めだよ。よければ一緒に遊ぶかい?」
「うん。こういうのは相手が居なきゃだしな。古岡も混ぜてやるよ」
「合点承知!」
夏目がくしゃっと笑う。古岡も。
俺は、古岡から「それ、あげる」ともらった帽子を脱いだ。
帽子には、可愛らしい猫の足跡がついていた。
【おわり】
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