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「じたばたしてもしょうがないよ。ぼくらはもう巻き込まれてしまったんだから。おそらく、古岡くんも」
「ああそうかよ。因みに、このキャップは古岡のものだと思う。中々手に入らない帽子なのに傷がついたとしょんぼりしていた。この傷だ。見覚えがある」
こくり頷いた夏目が古岡のキャップを被った。
何だろう。似合わない。似合わなさすぎる。あまりに似合わないので俺が被ることにした。
不承不承といった顔をした夏目が、ルーレットを手のひらに乗せる。
小さなルーレットは、ぽっこりと盛り上がった円盤中央のつまみを回すと、下部についている矢印が回る仕組みだった。矢印の先、円盤の縁には、色とりどりに印刷された数字が割り振られている。
「この怪奇現象が例の遊戯盤の為せる技なら話は早い。ゲームなんだから。クリアすれば脱出できるだろう。ルーレットを回して、出目の数だけ進む。止まった升目のイベントが発生する。すごろくの仕組みだ」
「あーもう。やりゃあいいんだろう。やって何もないならそれまでだしな」
「うん。違いない」
夏目が嬉しそうに笑った。例の、天使と悪魔が同居する子供みたいな笑顔で。
「伊吹くん、先にルーレットを回してくれ。ぼくはこのゲームをよく知っている。初心者特典があるんだ」
ええいままよ、と俺は、夏目に渡されたルーレット中央のつまみを捻った。くるくると回った矢印は数字を指し示してぴたっと止まる。この場合、問題は、その数字が何を意味するか、なのだが。
途端、ふわん、とルーレットの上空に文字が浮かんできた。驚くよりも先に、その内容に気を取られた。
「幸運値上昇……頭に猫が乗ります……?」
言い終わらない内に、どこからともなく跳んできた何かが、地面を蹴って、俺の頭部にしがみついた。
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