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結論から言うと、ゲームはさくさく進んだ。
何というか、想像以上に猫が強かった。
例の顔の次、穴に飛び降りてきたのは、カタカタと骨を鳴らす骸骨だった。
俺たちは逃げた。一本道を全力で逃げた。あんなもんに捕まったら、よからぬ事が起こるに決まっている。
どうにかこうにか逃げているうちに、また頭上から怪光線がほとばしった。夏目曰く、猫の目がぴかーっとひかって、かぱっと口が開いた瞬間、ちゅどーんとビームが発射されたらしいから、だいたい間違ってないだろう。
骨が! ああっ、骨がぁあ! 猫ずるい! なんて嘆き声が聞こえたのは気のせいだと思う。
でっかいトロールみたいなのが出てきた時は、にゃあんとひと鳴き。その愛らしい姿にトロールはめろめろになった。行っていい? とジェスチャーで尋ねたところ、快く道を通してくれた。
その他、首が複数ある大蛇、転がる岩、蜂の群れ、などなど。猫は全てを撃退していく。
猫すごい。猫強い。猫しか勝たん。
「つーか、夏目、お前、運悪くねぇ?」
追加で三マス進む、を当てたので、俺たちは洞窟の中をのんびり歩いていた。俺が引くのは回復だったり、治癒だったり、スキップだったりする。夏目が引くのはことごとく負のイベントだ。
夏目がちょっと落ち込んだ様子で呟いた。
「きみの猫がぼくの運を吸い取ってる説はあるだろうか?」
ルーレットに聞いてみたところ、他者の運に影響を及ぼすことはないと浮かび上がってきた。
夏目が、またうきうきし始める。
「ふうん、なるほど。一つ賢くなってしまった」
「お前は本当に変なやつだよ」
ぼやく俺に、夏目が苦笑した。
何か言いたそうにして口を閉ざす。
「言えよ」
「え」
俺は真顔で夏目を見た。
夏目はいつも淡々としている。マイペースで、変わり者で、常にどこか一線を引いている感じがする。たまに本心めいたものを口走る時もあるが、すぐに、はぐらかす。
もっと、ちゃんと話せばいいのにと思っていた。
俺の視線に促されたように、夏目が口をひらいた。
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