レンタル遊戯

6/11

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
* 結論から言うと、ゲームはさくさく進んだ。 何というか、想像以上に猫が強かった。 例の顔の次、穴に飛び降りてきたのは、カタカタと骨を鳴らす骸骨だった。 俺たちは逃げた。一本道を全力で逃げた。あんなもんに捕まったら、よからぬ事が起こるに決まっている。 どうにかこうにか逃げているうちに、また頭上から怪光線がほとばしった。夏目曰く、猫の目がぴかーっとひかって、かぱっと口が開いた瞬間、ちゅどーんとビームが発射されたらしいから、だいたい間違ってないだろう。 骨が! ああっ、骨がぁあ! 猫ずるい! なんて嘆き声が聞こえたのは気のせいだと思う。 でっかいトロールみたいなのが出てきた時は、にゃあんとひと鳴き。その愛らしい姿にトロールはめろめろになった。行っていい? とジェスチャーで尋ねたところ、快く道を通してくれた。 その他、首が複数ある大蛇、転がる岩、蜂の群れ、などなど。猫は全てを撃退していく。 猫すごい。猫強い。猫しか勝たん。 「つーか、夏目、お前、運悪くねぇ?」 追加で三マス進む、を当てたので、俺たちは洞窟の中をのんびり歩いていた。俺が引くのは回復だったり、治癒だったり、スキップだったりする。夏目が引くのはことごとく負のイベントだ。 夏目がちょっと落ち込んだ様子で呟いた。 「きみの猫がぼくの運を吸い取ってる説はあるだろうか?」 ルーレットに聞いてみたところ、他者の運に影響を及ぼすことはないと浮かび上がってきた。 夏目が、またうきうきし始める。 「ふうん、なるほど。一つ賢くなってしまった」 「お前は本当に変なやつだよ」 ぼやく俺に、夏目が苦笑した。 何か言いたそうにして口を閉ざす。 「言えよ」 「え」 俺は真顔で夏目を見た。 夏目はいつも淡々としている。マイペースで、変わり者で、常にどこか一線を引いている感じがする。たまに本心めいたものを口走る時もあるが、すぐに、はぐらかす。 もっと、ちゃんと話せばいいのにと思っていた。 俺の視線に促されたように、夏目が口をひらいた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加