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またか。
向こうから隣のクラスの女子が走ってくるのが見えて、大翔は思わず舌打ちした。
「篠山くん!碧ちゃんが!」
息を切らせて大翔の側にたどり着いたその子は、息を切らせながら、大翔の予想通りのセリフを叫んだ。
なんでいちいち俺のところに来るんだ。
内心そう毒づきながらも、「どこ?」と尋ねると、その女子は「教室」と安心したような、恥ずかしそうな、なんとも言えない表情を浮かべた。
「分かった。ありがとう」
そう答えて、大翔はその教室に向かって走り出した。
せっかく今日は、休憩時間に大翔のクラスがサッカーの日だったのに。
校舎の時計を見上げると、休憩時間終了まであと十分ある。
保健室まで連れて行って戻るのは…無理だろうな。
なんであいつはいつもこうタイミングが悪いんだ。わざとじゃないだろうな。
隣のクラスにたどり着いた大翔を、碧はへたり込んだまま涙目で見上げた。そばで三人の女子が心配そうに囲んでいる。
まぁ、倒れているよりましか。
軽くため息をついて、大翔は碧の側に屈んだ。
「大丈夫か?歩けるか?」
碧はこくりとうなずいて、そろそろと立ち上がろうとした。大翔がすかさず碧を支える。日常茶飯事すぎて、もう支えるコツも熟知している。
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