ふたりの秘密  理想的な家族3ー大翔

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 碧は大翔の双子の妹だ。何故か言葉をしゃべれない。耳は問題なく聞こえているし、口やのどの構造にも問題はないので、心因性のものではないかと医者は言っているが、生まれてから一度も言葉を発していない。  これには医者も首をひねるばかりだった。  碧はしゃべらないだけでなく、こころの不調がすぐに身体にも出る。繊細な子だと大人は言うが、大翔に言わせると、嫌なことがあると、すぐに倒れたり、気分が悪くなったりする迷惑な身体だ。  そしていつも迷惑を被るのは、双子である大翔だ。「繊細」という言葉に守られている碧は、いつも大事にされている。それに腹が立つのに、学校で碧が倒れれば、いつも大翔が呼ばれ、呼ばれた大翔も腹を立てながら、駆け付けてしまう。更に腹が立つことに、そのたびに大翔は碧の心配をしてしまう。  大翔が支える碧の身体は、熱くもなく、冷たすぎもしなかった。そのことに大翔はホッとする。  大翔は黙って、碧と保健室へ歩いた。  大翔がしゃべらないのは、碧から返答がないからではない。「どうしたの?」と訊いても、碧は「別に」といったふうに首を横に振るだけだからだ。  そして保健室について、先生に碧が倒れた理由を訊かれても、「さぁ」と首をすくめるしかないからだ。  双子でいつも助けているからと、碧のことをなんでも分かっていると思わないで欲しい。  大翔にだって分からないことだらけだ。  碧は自分の言いたいことは、筆談で伝えてくるが、気持ちや理由を語りたがらない。いつも「別に」と首を横に振るだけだ。  家族をはじめ、周囲の大人も、それを碧が「繊細」だからと許している。決して踏み込まない。  それを俺に訊かれても分からない。
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