毛計画

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毛計画

林間学校の開催、 いや、"毛闘"の開催を聞いたその日の夜。 僕は机に向かっていた。 宿題、課題、提出プリント。 そんなものをしている暇はない。 毛闘に向けての様々な計画を立てているのだ。 現在、4月1日。 毛闘の開催は、6月20日。 つまり約2ヶ月半程の準備期間がある。 この約2ヶ月の間に、自分の陰毛 つまり"自毛"を完璧に仕上げ勝利する。 まずここで、 現在の自毛の状態を確認しておこう。 本数:20 (太毛:8 細毛:12) 5年生の初めでこの状態。 悪くはない。 5年生の陰毛の量なんてたかが知れている。 ボーボーの奴は少ない、 というか、そんな奴はいない。 なので、このままいけば地位を落とされることはないだろう。今までと変わらない、安定した学校生活を送ることができる。 しかし、安定などいらないのだ。 僕は圧倒的な勝利を収め、真の男になる。 そのためには、 20付近で挑むのは少し不安だ。 自毛をこの2ヶ月間で増やすにはどうするか。 まず考えたいのが、 「自然成長」だ。 成長期真っ只中の毛の成長。 予想だと、 この2ヶ月間でプラス15本。 太毛5本・細毛10本の15本。 真っ当に育ってくれれば、 35本(太毛:13 細毛:22)で、 本番を迎えることができる。 悪くないが、まだ不安だ。 自然成長だけでなく、自分自身でできる最大限の努力をしておく必要がある。 次に考えたいのが、 「栄養成長」だ。 陰毛の量というのは、 第一に遺伝的なものではある。 だが、 それに次いで影響するのが、男性ホルモンだ。 男性ホルモンが多ければ、毛が増える。 そして、 その男性ホルモンは、 食材によって増やすことができるのだ。 その食材をどう調達するか。 私のおこづかいは毎月500円。 毛闘は6月。 4.5.6月分合わせて、 1500円自由に使えるということだ。 明日、男性ホルモン食材の下見をしてこよう。 そして最後に考えたいのが、 「偽造成長」だ。 その名の通り、毛を偽造する。 つまり、 "偽毛"を作る。 この方法は 言ってしまえば禁じ手である。 偽毛がバレた時点で、 その場で強制敗退が決まる。 と同時に、学校での地位がどん底へと落ちる。下手をすれば、卒業までどん底生活を送るハメになる。その大きなリスクを負ってでも作る。 それが、偽毛なのだ。 ここで僕は考えた。 絶対にバレることのない、 最高峰の偽毛を作り上げればいいのでは? 偽毛作りのパターンとしては、2通りある。 1つ目は、ペン偽毛。 つまり、 ペンによって書き上げられる偽毛だ。 これは簡単な故に、クオリティが低い。 そこらの安いペンを使ってはあっという間にバレてしまう。ある程度の技術を伴う偽毛だ。 2つ目は、リアル偽毛。 つまり、 他の部分の毛を陰毛へと持ってくる、 植毛スタイルの偽毛だ。 これに関しては発覚のリスクは相当低い。 しかし、持続力がない。 接着剤などでくっつけることになるので、少しの衝撃や接触で抜けてしまう。これも計算が必要だ。 この2つを鑑みて、 僕の編み出した偽毛作戦は、コレだ。 "毛獣"作戦。 まず、 ペン偽毛には細毛を担当してもらう。 細毛に合う柔らかいタッチのペンで、 できる限りの細毛を足しておく。 欲張らずに、できる限りの量だ。 そして、 リアル偽毛は、もちろん太毛の担当だ。 しかしこれは、一度限りの必殺技だ。 大浴場には大体トイレが付いている。裸になった状態で、トイレへ駆け込む。その際、リアル偽毛ストックケースと接着剤を持っておく。 そして、トイレでリアル偽毛を接着。 そこからタオルをフワッと被せ、なんの衝撃も与えないように、ゆっくりと大浴場へと足をすすめる。男子の前に堂々登場。タオルをゆっくり退ける。獣の風格を持った毛が、タオルの幕が開けたと同時に暴れ回る。 これが、"毛獣"作戦だ。 このリアル偽毛は、お披露目以降ボロボロと剥がれ落ちてしまう。これは勝利の瞬間と共にむしりとり、フィナーレの紙吹雪としよう。 これで役者は揃った。 「自然成長」「栄養成長」「偽造成長」 この3つで、 僕は、自毛を王にする。 そして、僕も王になる。 僕は必ずこの計画をやり遂げる。 パジャマの上から、 自毛を強く握りしめる。 "プチッ" 「あっ...太毛が...」
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