主人公に向いてない

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いつも通り母に見送られて家を出て、混んでいない電車に乗って学校へと向かう。 はじめはホームルーム開始五分前に教室に着くように家を出ていたのだけれど、それだと満員電車のピークにあたってしまう。人混みに巻き込まれると本を読めないし、何より心拍が激しくなってしまう自覚のある私は、一ヶ月程試行錯誤をした。その結果、最適な空き具合で乗車できる時間帯を見つけ出すことに成功し、それからは快適に登校することができている。 ちょうど空いていた端の席に座り、本を取り出す。今日から読み始める新しいものだ。昨日読み残していたものは、あの後しっかりと読み終えている。 半分程読み終えたところで、学校の最寄り駅に着いた。文庫本をしまい、電車を降りる。 電車の空き具合に比例しているのか、通学路も快適なものだ。部活の朝練のために早く通学する生徒のピークは過ぎ、後は私のように目的なく早めに登校する生徒がちらほら居るだけ。 そのまま黙々と登校し、誰も居ない校門をくぐって教室へと向かう。 教室に入ると、そこには誰も居なかった。部活の朝練だろう生徒達が来た証の鞄はちらほら見えるけれど、人は居ない。 私は廊下側の後ろから三番目の自席に腰を下ろし、荷物を整理する。格安で手に入れたワイヤレスイヤホンを耳に装着し、携帯に取り込んでいる音楽アプリを起動する。それから、一限目の授業のテキストとノートを開く。宿題は当然終えているけれど、予習は朝のこの時間にすることにしている。 本当は宿題や予習よりも本を読む方が勉強になるとは思うけれど、そればかりして成績を落とすのは良くないことらしい。だから、学校の勉強も適度にこなすようにしている。中学生の頃は学年三位以内にずっと入っており、それで両親は安心していたので、取り敢えずそのぐらいを目標にしている。入学してから一度中間テストというものがあったけど、無事学年三位をキープできた。 兎にも角にも、勉強することは大切だ。
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