主人公に向いてない

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夏休みが始まった。 私は夏のイベント関連の短期アルバイトをしつつ、学校の勉強の復習や読書に勤しむ日々を送っていた。 そんな中、文化祭の準備の集まりがあった。夏休みが始まり、一週間程が経った頃のことだった。 集まりにはクラスメイトがほぼ全員来ていた。 文化祭のクラスリーダーである仮合利明が、おそらくクラスメイト全員が参加しているメッセージアプリのグループで皆の予定を聞き出し、上手く調整したらしい。私は提示された集まりの予定に自分の予定を合わせたので、あまり意識していなかったのだけど。 集まりは、円滑に進んだ。 和装カフェの看板にもなる和装の制服のデザインは、そういうのが得意な人が予め何枚か案を持ち寄っており、そこから多数決と紆余曲折の折衷を経て決定した。カフェのメニューも、料理やカフェメニューの好きな人達が持ち寄ったものから、多数決と、予算を踏まえた熱烈な話し合いにより決定。そして、そこから和装カフェを実現するための役割分担が行われた。 「一緒に衣装作ろうね。」 終わった。 皆、それぞれに教室を出ていく。瞠留と玲沙は慌ただしく挨拶をして部活に向かった。 そんななか、衣装リーダーと本番の接客担当に決まった夏鈴が、楽しげに微笑みながら私の席に来てくれる。かくいう私も、いつの間にか衣装作成と接客担当に決まっていた。 「材料、今日買いに行こうかな。よかったら一緒にいかない?」 衣装リーダーになった夏鈴は、次の集まりまでにサンプルを作り、皆の前で披露することになった。次の集まりは三日後だから、結構大変な気もするけれど、手芸部で衣装製作も好きだと言っていた夏鈴は何だが楽しそうな気がする。 「うん、行く。」 対する私は、衣装作りなどしたことがない。本を見ればできる気はするけど、手慣れている人に教えて貰えそうならその方が良い。 「じゃあ、行こう。」 私は夏鈴と連れ立って教室を後にした。
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