主人公に向いてない

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『つらい』 そんなメッセージの受信に気付いたのは、夏鈴とともに和装カフェの衣装の材料を買い終え、明後日一緒に作ろうと約束をした後、一人電車に乗り帰路についていた時のことだった。 通知からメッセージを開く。のっきーから送られてきたそれは、返信に困る内容だった。 ー私だって和装の可愛い衣装が着たい。でも、接客は女の子がやるって感じで進んでたから、手をあげられなかった。私が着ても気持ち悪いだろうし。男の子は皆、準備は力仕事とか、本番は厨房とかだったしー 延々と続くメッセージに、一度画面から目を離し、大きく深呼吸をする。 どう、返信すれば良いのだろう。 正直なところ、接客をしたいのなら、すれば良いと思う。私と役割を交換したって良い。のっきーが着て気持ちが悪いのかどうかは私にはわからないけど、そう思うのなら自分に合う衣装を作れば良い。女性が接客で、男性が厨房、みたいな役割分担だったかは、正直覚えていない。 のっきーの言う内容は、やっぱり難しい。こういう時の事例は、本にあったのだろうか。記憶にないということは、なかったのだろうか。それとも、意識していなかったから覚えていないのか。 友人の悩みは、受け止めるべきだ。 だけど、私にはどうにもわからない。 返信の内容さえわからない。 それとも、このまま返信をしなくても良いのだろうか。 しばらく考えた。 結果、私は返信をした。今まで読んできた本の内容を、頭をフルに使って思い起こして返信した。 正解だろうか。 わからないけど、きっと返信をしないよりかは良いだろう。 友人からのメッセージは、放置すべきではない。 私が読んできた本には、いつもそんなふうに描かれていたのだから。
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