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今日はカラッとした暑さで湿度も低く、整理整頓清掃にはうってつけ。
こう言うと何か仕事みたいだな…。
納戸の中にもホコリが入り込むし、随分と物が増えたようなので少し整理をするのだ。
「う…モノが多いな…」
季節ごとに使う扇風機やヒーターは手前に置いてあるから認識出来るけど…その奥にある物は記憶がさだかでない。
「いつの間にこんなに物が増えたんだ?」
とりあえず中にある物全てを廊下に出した。
記憶にあるような、無いような…。
表面は綺麗だが一応雑巾でホコリを落とす。
「これは…ビニールの浮き輪?と…乗っかるやつ…それから空気入れるやつ…」
見覚えがあるような、無いような…。
「キャンプセットに携帯コンロのガス!これならバーベキュー出来んな!それから…」
カラフルな水玉色の箱。
「何だ?…ランドセル?新品じゃないか」
新品だとすると…真咲が使った物では無い…。
「分からん…」
涼真に聞こうにも彼は気になるベーカリーに行くと言って朝から出かけている。
「ま、いっか」
スノコを上げて入り込んだホコリを雑巾で拭き取り、しばらく乾かしてから入っていた物を戻そうとその場を一旦離れた。
「あ、部屋に携帯置いてきたな」
…涼真から連絡があるかもしれないし…。
自室のベッドの上に置き去りの携帯を取りに行ったついでにベッドにドーン!
「あー…布団…最高かよ…」
特に眠い訳ではないけれど、いつでも布団は俺を優しく受け止めてくれる。
「昼間っからゴロゴロすんのいいな〜」
一回転して何の気なしに見上げた本棚。
整った並びを乱す本に仰向けに寝転びながら手を伸ばした。
表紙が若干傷んでいたそれは本ではなくてアルバムのようだった。
「写真か…」
パラりと捲ると幾つもの笑顔が目にとびこんできた。
「これ…これ!」
全身がブルブルと震え、鳥肌がたった。
知ってる…俺、この写真見た事ある!
涼真がまだ小さな真咲に微笑んで、真咲も嬉しそうな顔で微笑み返している。
「これ…俺が…撮った写真…」
アルバムを持つ手が自分の意思とは関係なくぎこちなくページを捲っていく。
「俺が…俺が撮った…あぁ!」
…なのに…肝心な事が思い出せない。
「何で!何で!!知ってんだ!知ってんだよ!!」
思うように動かない指で捲る写真には見覚えがある。
…なのに…。
「…何で…知ってんのに、…見覚えがあるのに…思い出せないんだよ…」
言い様のない底知れぬ不安。
知っているのに分からない自分。
辛くて、苦しくて…アルバムを見ながら涙が溢れていた。
「…うぅ…ひっ…く……」
こんなに幸せそうな顔を撮ってたんだ、その時の俺は幸せに決まってる。
…でも、 全てを知っていて見守っている涼真や真咲は…俺の事を歯痒く思っているのではないか?
思い出せない不甲斐ない自分。
「涼真…ゴメン…」
「郁弥!」
「…あ…」
「何だ…ここに居たのか。納戸が空っぽになったままだからどうしたのかと思っ…ちょっと…泣いてる?」
紙袋を二つぶら下げて、心配そうに俺の顔を覗き込む涼真。
「…何でも、…ないんだ。知ってるのに思い出せなくて…胸が苦しいんだ…」
「郁弥…」
アルバムを抱き締め、涼真に見られたまま止まらない涙を零し続けた。
「…あのさ…こんな時にどうかと思ったんだけど…」
ベーカリーのロゴの入った大きな紙袋を机に置き、もう一つの白地にピンク色のリボンの付いた紙袋の口を開けて涼真はそこから何かを取り出した。
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