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「……!」
部屋を覗いて声を掛けようとしたのに…予想していた状況と随分違っていたせいで声が出せない。
「……っ…ふっ……ぁ…ん…」
僅かに聞こえる涼真の声。
入口に背を向けているから顔はよく見えないけど、その声は……ヤバい……。
ハッ…!
終電まで まだ二時間もあるから俺がいない間に溜まったアレを抜こうとしてるんだ!
これは…涼真の至極プライベートな行為。
他人、いや親兄弟でも見ていいモンじゃない。
頭では分かっているが、俺はどうしても目が離せずにゴクン、と唾を飲み込んだ。
畳んだ掛け布団とクッションに上半身を預け、脚は大きく開いているように見える。
左手は規則的に動きアレを扱いているんだろうけど…右手は胸?…どこ触ってるんだ?
…ん〜よく見えないなぁ…
「あ…ぁ…ンッ……」
聞き慣れない音がして…涼真の左腕が顔の上に……声を押し殺しているのだろうか。
その腕に黒い紐が見えるけど…それは…見覚えがあるような…レース……?
…!
引越しの時に俺が落としたダン箱に入った奴?
咲百合のだと思ってたけど…違うの??
聞きなれない音はそれと一緒に入ってた大人のアレか?
どうしよう…
本当に見てはいけない姿を見てしまった…!
涼真は相当集中してるみたいで一向に俺に気が付かない。
そうだ……無かった事に……
急いで…でも物音を立てないように…一目散で玄関へと向かい、外へ出た。
「おかえり郁弥」
「ただいま。あー疲れた」
何の気なしにリビングで寛いでいた涼真に声を掛ける。
…わざとらしいかな。
いや、多分大丈夫。
涼真はパジャマを着てもう寝る準備も出来ていた。
「真咲はもう寝てるよな」
「ぐっすりだよ。風呂入ってくれば?」
「あぁ、そうする。涼真も休めよ」
「そうする。おやすみ」
涼真がリビングを出てから自室にカバンを置きに行き、スーツを脱いで風呂へ。
湯の温度を上げてゆっくりと浸かった。
「あ〜気持ちいい〜」
疲れた身体にのんびりと浸かる風呂は有難い。
家を出てから一時間後、ようやく湯船に浸かれた。
外で晩飯食ってきただけなんだけどゆっくりとコーヒーまで飲んで、それから涼真の携帯に帰るコール。
でも俺とは違って涼真はこんなにのんびりとは出来ないよな。
子供との生活はなかなか気が休まらない所もあるから。
そんな生活の中で、せっかくの抜くタイミングを邪魔しそうになった。
こんな事にならないように気をつけないと…。
そんな風に考えて、ふと、さっきの涼真が脳裏に浮かんだ。
『 あ…ぁ…ンッ… 』
…あんな声、出すんだ…
…あんな…レースの下着とか…
…あんな…オモチャとか…使って…
どんな表情で涼真は自分を慰めるんだろう…
「はぁ…あ〜やべ…」
下を見れば涼真と同じく抜くタイミングを逃している俺の俺が思い出したようにむくりと頭をもたげていた。
「ちょっとだけ…溜まるとね、良くないから」
自分に言い訳なんてしなくてもいいのに、なぜか正当化してから行為に挑む。
洗い場でイスに座って股間のアレを手に取った。
「おい、久しぶりだよな、オマエ」
話しかけるなんてナンセンス。
…でも…、そうでもしないと脳裏にチラつく白い肌と黒い下着のコントラスト。
「…な…んか…アイツが…エロくて……ン…」
…久しぶりのソロプレイ…
くちくちと水音をさせて…でもなるべく静かに…。
そして涼真のあの姿が鮮明に思い出せるうちに…それをオカズにして…
緩く扱いて、先も手のひらで撫でるように刺激を与えた。
どんな顔してたんだろう…頭の中で振り返った涼真の顔は……
「ン…ンッ…!」
ドロリとした欲望を手に吐いて、正気に戻った。
「マジでヤベー奴じゃん、俺…」
…熱を吐き出した後の、この…賢者になる瞬間が嫌だ…。
「郁弥、おはよう」
「とと〜、はよ!」
「もう時間、だろ?」
少し寝坊してしまった俺は、涼真と真咲に起こされた。
「おはよう。悪いな」
似たような顔に寝顔を覗き込まれて些か気恥しい。
「いいんだ。俺だって、郁弥の役にたちたい。な、真咲」
「とと〜だっこ〜」
布団の上から抱きついてくる体温は身体だけでなく心まで温めてくれる。
そうか、俺がするだけじゃなくて…俺も…してもらえるんだ…。
気づいて嬉しい反面、何だか胸が詰まった。
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