想い出が褪せる頃

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「俺のナカ…気持ちくなかった?」 「…」 涼真の問いかけに首を横に振って答えたが…背を向けて丸まる俺。 「こっち向いて」 「…カッコ悪い…」 「はは…」 涼真の胎が気持ちよすぎて…思ってたよりも早くイッてしまったのだ…。 もうちょっと頑張れると思ってたんだけど…。 「今日はもう終わりって訳じゃないだろ?それとも…もしかして、過去とか気になってる?」 「…え…」 振り返って涼真の顔をじっと見た。 「郁弥が思ってるのとは違うかもだけど…誰かと付き合った事…無いんだ」 「本当?」 「こーゆー事も…その…」 …もしかして、俺だけ? 「…でも、さ…寂しくて………とか、使ったりしてたから…初心者とは言いきれないけど…」 「…おもちゃ?」 「……とかね」 涼真は赤らんだ顔を恥ずかしそうにに逸らした。 「じゃあさ、こういうのは、どう?」 体を起こしベッドの下に手を伸ばして黒い紙袋を取り出し、涼真に渡した。 「何?」 俺に釣られて起き上がった涼真は封を開け中身を確認すると顔色がサッと変わった。 赤みを帯びていた顔から血の気が失せ、涼真の指が僅かに震えている。 「…え…これ…何で…」 「ゴメン…。見ちゃったんだ…その…部屋で…」 涼真は目を見開き明らかに動揺していた。 「きも…ち悪くさせた…?」 「違う!俺は涼真が着てるとこ、見たいだけ!」 「見たい…?見たいの?」 俺は深く頷いた。 「見せても、嫌いに…ならない?」 「なるはずないだろ!」 ホッとしたように息を吐き出して、涼真はそれを俺に手渡した。 「なら…郁弥が…着させて…」 真正面から俺を見据える色を帯びた視線に知らず息を飲む。 涼真から薄い生地のそれを貰い受け、目の前で広げて見せた。 「じゃあ…ほら、腕を通して…」 大きな着せ替え人形の腕に肩紐を通し、胸の前でスナップボタンをパチンと嵌めた。 男なんだからエロい事やそんなシチュエーションは嫌じゃない。 けれど女装が好きって訳でもないし、男だって…涼真以外の奴にエロい事するのもされるのも…死んでもお断りだ。 なのに… 「どう?」 「…う…うん…」 俺が望んでしてもらった下着姿の涼真…見たいのに…直視出来ない。 「…似合わない?」 「いや…あの…うん、イイ…」 ベッドの上でなぜか正座する涼真の太腿に黒いレースの裾が掛かる。 「ほら、ちゃんと…見て」 両手で頬を捕まれグイッと強制的に顔の向きを変えられて、真正面から涼真を捉えた。 線が細いとはいえ、女性とは違う体つき。 それでも白い肌にレースの黒が映える。 我ながら唆る下着を選んだ、と思った。 透け感著しいチュール生地、裾には二重の幅広いレースとフリル。 ハイウエストの胸の位置にはツヤッと光る黒いリボン。 ゴクン、と喉が鳴った。 「これが…俺なんだ…」 自嘲するように涼真が言った。 「…俺は…郁弥が好きで…ずっと、郁弥に抱かれる女の子になりたかった…」 「涼真…」 「なれる訳、ないのに…抱かれる夢を見て…。それに…こんな姿…男の体なのに気持ちわ…」 「もう、いいから」 涼真を胸に抱きしめた 「いいんだって。どんな涼真も…俺は、好きだから」 髪を撫でつけ、背中に腕を回せば薄い生地が指に纏わりつく。 つつっ…と指を滑らせて裾から侵入すれば腰の辺りにも頼りないレースの感触。 いわゆるTバックと呼ばれるアレ。 全開になっている尻たぶを包み込むように触り、レースの下に手を差し入れた。 ビクッと涼真の身体が緊張する。 「い…くや…触って…。もっと俺を欲しがって」 涼真と視線が絡みつき、震える唇を合わせた。
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