2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
№2
オカルト研究部の部長の葉山真樹がきびきびとした態度だが、優しい口調であたし達を鎮めた。
葉山部長は津樹の姉だ。
姉妹そろってオカルト好きとは親のどちらかが、いや、両方ともがオカルトが好きなのだろう。
あたしの両親はオカルトなんて大嫌いだ。聞いたことはないが、雰囲気で分かる。見えないことは存在しない主義。
でも、残念ながらあたしは見えない者が見えたりする。
「シャッ」と二年の小山先輩が勢いよく暗幕を開ける。西日に全員が目を細めて、有名演歌歌手のマネをする芸人みたいな顔になった。
部室の片付けを終え、あたしは手近にあったプリントの裏側に絵を描き始めた。「なに描くの?」と津樹を覗いた四人が絵を覗き込む。
あたしはササっと描きながら、「クイズです。誰のだと思いますか?」といたずらっぽく言った。
「クイズ?知らないのは津樹だけでしょ?一択で津樹の」と葉山部長は答える。
津樹は「なに?仲直りのつもりで私の顔を描いているの?やめて、恥ずかしいよ」と顔を赤らめて見ている。しかし、絵が完成に近づくと「私はそんなにブルドッグみたいにたるんだ頬はしていないと思うけど、私の顔をよく見てる?」と文句を言い始めた。
「津樹ちゃん、見ていなよ。さすが美術部だね。津樹オッサン風味だね」三年の後藤先輩が言う。
「あっ、あたし達のオジイチャンだ。オジイチャンは津樹の守護霊様になっているんだね」葉山部長は目を輝かせて言った。
「は?お姉ちゃん、何言ってるの?」津樹は葉山部長の腕をつかんで聴いた。
「さっき言ったでしょ、星山はオカルトの当事者だって。星山は肖像画を描こうとすると、その人の守護霊様が見えるの。上級生は四月の早いうちに守護霊様を描いてもらったのよ。私を守っているのは親戚のカツミオバチャンみたいなの。私達が小学生の時に死んじゃったカツミオバチャンのことを覚えている?ほら、お小遣いを沢山くれて優しかったオバチャン。ああ、オバチャン、いつも守ってくれてありがとう。津樹も『オジイチャン、いつもありがとう』って抱きしめてあげなさい」と葉山部長は自分の肩を抱きしめた。
「星山さん、本当なの?」と津樹は目をぱちくりして聞いてきた。
「うん」とあたしは自信満々で頷いた。
「本当に?」もう一度、聞かれる。
最初のコメントを投稿しよう!