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画面から目を離し振り返ると、母の手には弁当箱が提げられていた
「優香、お弁当忘れてってるわ」
「アイツ、昼飯抜きじゃん」
まあ人間、一食抜いたところで死にはしない。僕の今日の昼飯にでもすれば無駄にもならない。何も問題は無さそうだが、母の表情は良くない。
「でもあの子、今日部活の日じゃない? どうしようかしら……」
妹の優香は陸上部に所属している。別に強豪校というわけでもなく中の下クラスの部活だが、それでもスタミナがものをいうのは想像に難くはない。
「じゃあ持ってったらいいじゃん」
「お母さん逆方向だから、今からじゃ無理よ」
「えー。じゃあどうすんの」
「お兄ちゃん持ってってあげてよ」
「無理だよ。あの学校、この前入れてくれなかったもん」
優香は規律の厳しい女学校に通っている。同じように忘れ物を届けたことがあったのだが、男の僕は校門に近づくだけで話すら聞いてもらえず追い返されてしまった。
どうする、どうすると二人で頭をひねらせていると、今度は姉の春香がリビングへ降りてきた。
「何してんの?」
僕と母は無言で残された優香の弁当箱を指さす。
「え。優香、昼飯抜きじゃーん」
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