面白半分で女装させられ、妹へ弁当を届けられるのは僕だけだ。

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 そうやり取りしていると、チャイムが鳴った。屋外のスピーカーが近くにあるのか、耳をふさぐ程の爆音だ。屋上行きの階段から降りている所を誰かに見られるとまずい。鳴り終わる前に、慌てて屋上を後にし、階段を駆け下りた。三階の床を踏んだ時、教室の扉が次々に開く音が聞こえた。何とか間に合ったようだ。ざわざわと騒がしくなり始める。しかし、階段を降りようとする学生はいないようだ。もう一つ階層を下げる。すると、手提げ袋を手に持った学生が階段を降りていく姿がいくつか見えた。装いが制服のままであるあたり、更衣室も別の敷地にあるのだろう。この目の前にいる群れについていくことも考えたが、別の学生たちに後ろをとられ前後を挟まれると姿を消しづらくなる。少しこらえ、好機を待つ。何組かの手提げ袋を持った団体を見送ると、休み時間の半ばごろに、小走りで階段を降りてゆく三人組が現れた。慌て具合から彼女たちが最後尾だろうと踏んで後を追う。周りからは四人組の一人だと思われるような、それでいて三人には気付かれないような間合いで駆けてゆく。一階廊下、玄関を抜け校門へと一直線で向かう。意外とバレないものだ。きっと前の三人がそれなりに血相を変えてくれているからだろう。顔は見えないが。そのまま校門を抜け、途中まで彼女らと走った後、別の敷地へと入っていく姿を見送りつつ、ひとり帰路をたどっていった。帰っている途中でも、分岐で怪しんだ教師や警備員に追われていないか、また探し始めないかと冷や冷やしたが、無事自宅へ辿り着けると安心感と達成感に包まれた。
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