面白半分で女装させられ、妹へ弁当を届けられるのは僕だけだ。

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「ご飯できたわよーーー!」  下の階で叫ぶ母の声で目を覚ます。低い血圧のせいで重い身体をひきずり、階段を降りていく。リビングでは既に父、母、姉、妹が食卓についていた。「おはよ」と短く挨拶し席へ付くと味噌汁の香りが少し目を開けさせた。他の四人はテキパキと箸を進めていた。 「なんだ、涼太は高校今日休みか?」  遅い動作に少し苛ついたのから、父から尋ねられる。少しピリッとした口調に身が引き締まる。自分は仕事へ向かうというのに側で怠けられているから、どこか腹が立つのだろう。 「創立記念日だから休み」 「そうか。でも、休みだからってダラダラしてはいけないぞ」  今日はどうやら機嫌がよろしくないらしい。苛立ちは感染する様で、姉や妹の顔も少し険しくなっていた。「はい」と素直に答え、今度は手際良く焼き魚や白米を口へと運んでいく。しかし、元から少食な上にストレスが加わるといつも以上に食が細くなってしまう。大皿に盛られた南瓜の煮物にはついぞ手を付けることなく手を合わせてしまった。それを見て 「そんなんだから、いつまで経っても筋肉がつかないんだ」  と小言を頂戴してしまう。だが、食べられないものは仕方がない。「お昼に食べるよ」とだけ言い、リビングへと向かった。
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