僕の秘密基地

2/2
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
(おかしいなぁ。) 伯父さんは、この山にカブトムシやクワガタがいっぱいいるって言ってたけど、全然みつからない。 「あ……」 ほっぺたに冷たい雫が落ちた。 びっくりして空を見上げると、いつの間にか空は暗く曇っていた。 そんな間にも大粒の雨が地面を叩き始めた。 「うわっ!」 急に響いた雷鳴と稲妻。 僕は、焦って闇雲に駆け出した。 どうしよう!? 僕は雷が苦手だから、泣きそうだ。 何とか雨宿り出来るところはないものかとあたりを見渡すけれど、それらしき場所は見当たらない。 息は切れ、零れた涙が雨に混じる。 (あれ……?) 僕の目は、何かをみつけた。 草むらの向こうに窪みのようなものがある。 僕はそこに向かって走った。 (助かった……) そこは洞窟だった。 とは言っても、奥行きはあんまりない。 でも、十分雨は凌げる。 僕は洞窟の一番奥に座って、涙を拭った。 水筒のお茶を飲んだら、気分も少し落ち着いた。 雷鳴はまだ続いていたけれど、ここにいるとなんだか怖さも薄らいだ。 (なんか、いいな、ここ……) ゆっくりとあたりを見渡す。 何もないけれど… 入口に扉を付けて、ランプを置いたら、ここは基地になる。 そう思ったら、なんだかワクワクして来た。 今日みたいな時のために、食料も少し準備して… そうだ。百均でブルーシートを買ってきて敷くのも良いな。 そしたら、ここで昼寝も出来る。 色んなことを考えていたら、いつの間にか雨は小雨になっていた。 「わっ!」 突然鳴った着信音に、僕はびっくりした。 電話はお母さんからだった。 雷雨のことを心配してくれたみたいだった。 「僕なら全然大丈夫だから。」 泣いてしまったことは言わなかった。 基地を見つけたことも言わなかった。 そう、ここは僕だけの秘密基地。 誰にも言うことは出来ない。 もうカブトムシのことは頭になかった。 基地の扉になりそうなものはないかと、小雨の中に飛び出した。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!