17人が本棚に入れています
本棚に追加
打ち上げ花火
(暑いなぁ……)
夜になっても、少しも涼しくならない。
駅から家までのこの道程が一番嫌いだ。
一日の疲れがどっと出て来るような気がする。
(あ……)
ふとすれ違った親子連れ…
子供の手には、花火のセットが握られていた。
それを見た瞬間、思い出すことがあった。
「……三年なんて、あっという間だね。」
小さな独り言。
頭の中に浮かんだのは、打ち上げ花火。
夏の夜空に咲く、大輪の花のような打ち上げ花火だった。
隣町の花火大会を一緒に見たカップルは、幸せな結婚をする…そんな言い伝えがあった。
どこにでもありがちな話だとは思いつつ、それでも、やっぱり気になるもので…
私と公太は付き合い始めて三年経ち、結婚を意識していたこともあり、私は思い切って、彼を隣町の花火大会に公太を誘った。
浴衣を新調し、その日は美容院に行って、髪だけじゃなく、メイクもやってもらい、私はウキウキした気分で待ち合わせの場所に向かった。
けれど、いくら待っても公太は現れず……
電話にもLINEにも返事は来なかった。
空には夜空を明るく照らす打ち上げ花火。
爆音に耳がやられる。
彼を待っている間、何人かの男性に声をかけられ、むしゃくしゃした私は、ついにその場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!