打ち上げ花火

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打ち上げ花火

(暑いなぁ……) 夜になっても、少しも涼しくならない。 駅から家までのこの道程が一番嫌いだ。 一日の疲れがどっと出て来るような気がする。 (あ……) ふとすれ違った親子連れ… 子供の手には、花火のセットが握られていた。 それを見た瞬間、思い出すことがあった。 「……三年なんて、あっという間だね。」 小さな独り言。 頭の中に浮かんだのは、打ち上げ花火。 夏の夜空に咲く、大輪の花のような打ち上げ花火だった。 隣町の花火大会を一緒に見たカップルは、幸せな結婚をする…そんな言い伝えがあった。 どこにでもありがちな話だとは思いつつ、それでも、やっぱり気になるもので… 私と公太は付き合い始めて三年経ち、結婚を意識していたこともあり、私は思い切って、彼を隣町の花火大会に公太を誘った。 浴衣を新調し、その日は美容院に行って、髪だけじゃなく、メイクもやってもらい、私はウキウキした気分で待ち合わせの場所に向かった。 けれど、いくら待っても公太は現れず…… 電話にもLINEにも返事は来なかった。 空には夜空を明るく照らす打ち上げ花火。 爆音に耳がやられる。 彼を待っている間、何人かの男性に声をかけられ、むしゃくしゃした私は、ついにその場を後にした。
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