夕暮れ時の一目惚れ

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 夕暮れはもの悲しく、憂鬱な気持ちをさらにどん底まで突き落とす。この橙と藍色のコントラストを見る度に、苦い気持ちになるに違いない。  そんなことを思いながら、俺は行く当てもなく海沿いの道を歩いていた。  悪いことは続くものだ。勤めていた会社が倒産し、会社の寮に入っていた俺は部屋を追い出された。観光地でも何でもない場所でスーツケースを引きトボトボと歩いている姿は、田舎では不審人物に見えるだろう。それでも、家具などが備え付けの部屋でスーツケース一個に荷物が収まったのは、不幸中の幸いだ。  しかし、困った。ここが都会なら一晩の宿など漫画喫茶でもなんでも安価なところがすぐに見つかるだろうが、ここは田舎だ。そんなものはない。あったとしてもラブホくらいで、そこを利用すれば、翌日には目撃情報が広まっていそうな気がして嫌だった。せめて観光地であれば、宿泊施設があったのに。  漏れるのは溜め息と腹の音だけだ。  そういえば、と気付くと今日は何も食べていなかった。ポケットを探ってみるが、飴一つ見つからない。
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