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下水探検家
先に明記しておくと、この短編には僕のつまらない話を連ねていくことにしている。恐らくだが、読者諸君にはさして面白みもないくだらない話ばかりになるだろう。
しかし僕は、僕という人間が生きて、肌身に感じたことや感想を、忘れたくない。その手段としてここに投稿することにした。
ブログでもなんでも勝手にやって綴れば良い話なのだろうが、このような投稿サイトがあるのであれば是非とも活用したいと思い、ここに投下することにした。
僕のつまらない話が、読者諸君の暇つぶし程度にでもなれば幸いであると思いたい。
さて、話は早速僕の幼少期の頃に移る。
僕は今でこそゲームやらネットやらに夢中で部屋に篭る人間になってしまったが、小学生の頃はアウトドア……とまではいかないけれど、それなりに外で遊ぶことが好きだった。
運動は全般好きだったし、探検ごっこだって大好きだった。しかし僕には極端に友人がおらず、そして友人らの全てが外で遊ぶことを了承するわけでも無かった。
一握りの外出好きの友人のみを誘って、近所を散策した日々は懐かしい。
子供というのは本当に美化フィルターを何十枚も通して世界を見ている。ただ道端に生えている雑草でさえ、オモチャになるのだ。安上がりなり。
そんな僕はある日、友人二人と下水路付近の溝を潜って遊んでいた。今思えば危険極まりない行為だが、小学生にはちょっと臭い秘密の迷路を探検している気分でしかない。
雨の降る正午、夏前の涼しげな時間帯、僕たちは軒先から滝のように流れ落ちる水を「滝行だ!」とくだらない発言で頭から受けて、下水路を歩いていた。
記憶は朧げだが、洞窟のような場所に差し掛かった時だ。
「あんたら! 何しとんねん!」
知らないお婆さんが上方から僕たちを見下ろしてカンカンに怒っていた。僕たちは「探検してます!」と馬鹿正直に答えた。しかしお婆さんが「はよ上がっておいで!!」と怒鳴るものだから、僕らは渋々、壁の階段を登ってお婆さんの元へ行った。
お婆さんは僕たちの顔をジロジロと見た後、「あの先で子供が死んだことがあるんよ」と言った。
なんでも、下水に落っこちたのか、はたまた用水路を探検して迷ったのか、あの下水の付近で子供が真っ白になって浮かび上がってきたのだとか。お婆さんは「漂白剤でも混じってたんかねぇ」と、しみじみと言った後、僕らを再三叱りつけ「雨降っとるからはよ帰れ!」と睨みつけてきた。
僕らは踵を返して、一目散に、僕の家に駆け込んだ。もちろんびしょびしょに濡れた状態で。母は特に何も言わず風呂を沸かしたので僕たちは風呂に浸かった。
正直に言おう。怖かった。知らない大人に怒られるという体験は、令和の今でこそ味わえないものだろう。しかし僕が子供の頃はクソババアやクソジジイに道端で死ぬほど怒られた。それもまた良き経験だ。
いやそうではない。用水路の話だ。
きっと今では用水路を探検するようなバカな子供(自分を含めて)はいないと思うが、もしも道端の鉄板の敷かれた大きな溝に潜り込む子供を見つけたら、躊躇せずに「出てこい!」と怒鳴りつけて欲しい。
小学生の探検家はどこにでも潜り込むし、どこでも向かうのだ。たとえそれが男児であろうと女児であろうとも。
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