生まれ故郷に向けて2

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生まれ故郷に向けて2

 馬車に乗り移動し始めてからかなりの時間がたった。出発したときはまだ朝だったがもう夕方になっていた。泊まる予定の宿が見えてきた。びるるんはこれからの事の緊張感とマロンとともに行動できる嬉しさでいっぱいだった。マロンは、最初は身分を気にしていて堅苦しかったが、今ではフランクになった。びるるんは実父や実兄と話すよりマロンとのほうが話しやすく、話が弾んでいた。そんなこんなで宿に到着した。 「皇帝陛下一同様、本日お泊りになられる宿に到着いたしました。お足元にお気をつけてお降りになってください」 と先導していた護衛長が扉をノックしてそういった。 皇帝を先頭に皆が宿の中に入っていった。部屋割りとしては一人一部屋与えられていた。びるるんは部屋に案内され荷物を置きマロンを早速呼んだ。 「ねぇ、マロン。貴方ともっと親しくなりたいの。今の関係だと物足りないの。そうだわ今から一緒に外の空気を吸いに行きましょう」 「畏まりました。びるるん様」 びるるんとマロンは二人で外に出た。外の天気は晴れていた。満天の星空と心地よい風で二人は癒やされていた。 「マロン。私ね貴方のことが──」 びるるんが話しだした瞬間急に周辺に雲が広がり、大雨が降った。 「びるるん様。お話の続きはお部屋でしましょう。戻りますよ。さぁ、はやく」 「そうね。戻りましょう」 そう言ってびるるんは歩き出した。地面は雨で滑りやすくなっている。びるるんはそんな事を考えもせずに速歩きをした。すると、足を滑らせて前を歩いているマロンにぶつかった。急なことでマロンもびるるんもその場で停止。びるるんは好きな人と触れ合っていることへの嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなった。   その頃スンミョンはびるるんが部屋にいないことを知り傘を持って外に出た。 「我が妹よ、どこにいるのだ。こんな時間に」 一人でボソボソ言いながら歩いているとなんと、マロンの胸元にびるるんが寄り掛かっているのを見てしまった。妹が護衛に寄りかかっているのに衝撃を受け、急いで父である皇帝のもとに向かうのであった。 「父上、妹が、マロンという騎士に寄りかかっていて何やら表情がお互いに恋する乙女のようになっていました。どうしましょう。せっかく再会できた妹が騎士に取られてしまいます。何だとしても阻止せねば」 「何、それは誠か。騎士にあの二人をここに連れてこさせよう。そこで判断する。スンミョンもここで待ってなさい」  その頃びるるんは、皇帝とスンミョンにこの事が知られているとは知らず仲良く部屋に戻ろうとしたその時だった、騎士が二人のところに来たのは。 「皇女様、そしてマロン。皇帝陛下がお呼びです。私の後についてきてください」 「「はい」」 二人はビクビクしながら皇帝の元へ向かった。 「よく来た、二人共。余が何故呼んだか分かっておらぬようだな。1から説明するとしよう。スンミョンが傘を持ってお主たちを迎えに行ったときにお主達が抱き合っていたのを見たと言ってな。それで呼び出したのだよ。で、二人はどうなんだ。お互いに好いてるのか?正直に言いなさい。では、びるるんよ、どうだ?」 「はい、私はマロンのこと好いています」 「陛下、僭越ながらびるるん様のことを好いております」 「そうか、再会してすぐに娘を取られるのはよく思わないが、どこの馬の骨かも知らない男の婚約者にするのは避けたいからな。マロンよ、びるるんとの婚約を認める。実はなお主の出自も特殊でな、然るべき時期が来るまで隠していたのだよ。この話は国に帰ってからするとしよう。明日は朝早くから宿を出る。今日はもう休むように」 「「はい、失礼いたします」」 長くて短い夜はこれで終わった。
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