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今まで聞き流していたのに、その内容だけはクリアに聞こえた。
ワタシは驚きのあまり、頭が真っ白になった。
「今、なんて?」
「ですから、王子には他に愛する方がいるらしいです。けど一国の王子がいつまでも独り身というわけにはいかない。王子の婚約者選びのことはご存知でしょう? ガラスの靴をピッタリ履ける女性という条件は、自ら走って逃げた少女に会えるわけがないとタカを括っていたのだとか」
「そんな……」
あまりのショックで腰掛けていた噴水の中にひっくり返りそうだった。
「おっと、大丈夫ですか?」
後ろに倒れるワタシに気がついた男が支えてくれた。
「私も聞いたときはショックでしたよ。魔法使いといえど、こんな偶然は作れません。しかし、少女も運がいい。王子は優しい人間です。愛さずとも丁重に扱ってくれます」
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