昔々あるところ

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これはワタシにしか出来ないこと。 呪いの針で王子を一突きする。 たったそれだけ。 その針は、たった一突きするだけで眠るように死に絶えるのだと。針をくれた魔法使いは言っていた。 二つ返事で引き受けた。 ワタシへのお願いは、いつも命令同然だった。 だからワタシにしか出来ないという頼み事は、今まで聞いたどんな言葉よりもワタシを救ってくれた。 たとえ王子が、かつての友達でも殺すことにためらいはなかった。 魔法使いと出会ったのは街の掲示板前。 王子が結婚するという知らせを見ていた時だ。 掲示板には、結婚式には国のどんな者も招き入れてパーティーを開くと書いてあった。 街で平凡に暮らしていた町娘が相手だと、大きな見出しになっていた。 プリンセスになるその人は、白黒記事の簡易な肖像画でも美しかった。 ワタシは王子と幼い頃に会ったことがあった。
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