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けれど彼が結婚すると言われても、今の自分の生活とかけ離れ過ぎていて実感がなかった。
ただスッキリした気持ちになった。買い出し先のパン屋が、自分を見て意地悪そうに笑っていた理由が分かったから。
「王子もついに結婚か。見た目麗しいと騒がれていたから、もっと早く結婚するかと思っていたけれど。案外遅かったな」
誰に言うでもない独り言は、空に溶けていった。
王子を友と呼んでいた幼かった思い出も同時に溶けていくみたいだった。
仕事を思い出し、さっさと帰ろうと踵をかえす。
振り返れば、街のシンボルの噴水がたえず水飛沫をあげている。
城の形をした真っ白な噴水。
汚れ一つない城型の噴水は、ワタシをあざ笑っているように見える。
王子を祝う気持ちもくすみ、思わず眉をひそめてしまう。
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