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そんな時に魔法使いがやってきた。
「おや、王子様が結婚するというのに随分辛気臭い顔をなさる人もいるもんだ」
このときのワタシは、ただの皮肉屋な男だと思っていた。
男は音もなく現れた。
見た目はどこにでもいる町人。
だけど纏う空気がどこかおかしい。
彼は、気持ち悪いほど爽やかな笑顔で話続ける。
「こんにちは。気分を害されてしまったのならお詫びします。王子様の結婚式など、誰もが知っているビッグニュースですから、いまだに新鮮な反応をする人間が珍しかったのです。今や国中の人間が仕事を忘れて、ドレスやスーツの新調に躍起になっているんです。国の仕立て屋も国外から仕立て屋を呼ぶ始末。ときどき通りかかるご婦人に紳士達も布や飾りの話題ばかり。王子のお相手が大変美しいというのは、私も同意しますけどね」
彼は一息で喋り表情を変えない。
相変わらずニコニコ顔。
やはり不気味な印象を持つがつまらなそうな口調には共感した。
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