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世間話は予想以上に弾んだ。
思ったよりも時間を喰って、そろそろ帰ろうかと思っていたら彼は首を傾げた。
「ところで、あなたはパーティーの準備をしないのですか? 仕立てに忙しそうにする連中をさんざん馬鹿にした私が、このような話をするのもおかしな話ですけども。あなたが着飾る姿なら見てみたい」
自嘲気味に肩をすくめる彼に、ワタシはわざと彼と同じ顔をした。
「ワタシには王子の結婚パーティーなど不釣り合いです。この街に居るのなら、あなたもワタシの噂を一度は耳にしたことがあるでしょう。大丈夫、ワタシ一人居なくとも王子が祝福されることに変わりはありません」
長い沈黙の後、噴水から流れる水の音がやけに響いた。
彼の表情は寂しげな顔から爽やかな笑顔にフッと戻った。
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