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「あなたの黒く艷のある髪には、星空を散りばめたような夜空色のドレスが似合う。王子のお相手の方が白のドレスを着るならば、黒く飾ったあなたは一層映えるでしょう。きっと互いの良さを引き出し合う。機会があったら是非着てみて下さい。その時は、私も見せて欲しい」
言うだけ言うと、彼は風のように去っていった。
男と別れた後、ワタシは大荷物を荷車で引きながら家路につく。
ボロボロの荷車は、引くのに余計に力が必要だ。
考え事をして気を紛らわせ荷車を引き続ける。
考えるのは、幸せな妄想なんかではない。
今日の献立や寝るまでに終わらせる仕事の段取り。
気は滅入るが、妄想に耽る時間もない。
そういえば少し前、家に仕立て屋が来ていた。
継父と継兄もパーティーに参加しするのだろう。
あの時、仕立て屋に出来上がりを早めるように怒鳴っていた。
男が言っていたとおり仕立て屋も仕立て屋を呼ぶほど、てんやわんやだったのだろう。
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