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継父達はずっと喚き散らしていた。
ざまぁない。
思い出してプッと吹き出す。久しぶり笑った。
家に帰れば継父と継兄に帰りが遅い嫌味を言われ、こき使われた。
いつの間に用意したのか、真新しい派手なスーツが二着用意してあった。
継父は
「大事な用事があるから、一刻も早く直しておけ」
とワタシに命令した。
それからワタシは毎夜、月明かりの下で針を進めた。
毎朝、手直しは済んだかと聞かれて、まだだと答えて叱られた。
針仕事は苦手だ。
裕福だった頃から勉強は得意だったが、てんで不器用だった。
ワタシは出来うる限り早く針を進める。
昔、友達に教えて貰った針仕事のコツを思い出す。
「楽しめば良いのよ」
彼女は何度聞いてもそれしか言わなかった。
サクサクとリズムよく縫う。
見栄だけで仕立て屋に大きめのサイズを頼んだ二人のスーツが徐々に、引き締まってくる。
楽しいはずだと言い聞かせて針を進めた。
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