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よく見てみれば、わかることっていうのはたくさんあった。
「ソニア」
陛下は、いつも、ソニアに会いに来ていた。
「ソニア、お茶が入りましたよ」
ヒース様は、私たちに、お茶を誘ってくれるけど、声をかけるのはいつもソニア。
ソニアが、私を誘っていた。
「考えてみれば、私と皆って、仕事の話以外したことない……」
私からふったこともないし、ふられたこともなかった。
だって、忙しかったし……そんな、人と話してる暇とか、ソニアに作られないとなかったし……
私の中で、無念で空虚な気持ちがぐるぐる回る。
別に、皆に愛されたかったわけじゃない。
でも、皆が愛してるのは、ソニアなのだ。
例えば、私とソニアが、聖女の力がなくなったとして。
私は村に帰されるだろうけれど、ソニアの事はわからない。帰すにしても、私より、名残おしいだろう。
「……馬鹿馬鹿しい」
別に、愛されたかったわけじゃない。
愛されるだけの人間なんて、馬鹿馬鹿しい。そう思ってようようと村を飛び出したはずなのだ。
私は、ずっとずっと、特別な人間になりたかったのだ。
けれど、これって。
なんだか、これって、特別なの?
体のどこかに、孔が空いた気がした。そこからやる気がしゅるしゅると抜けていく。
私はぼーっとベッドに寝転んでいた。貴重な睡眠時間なのに、眠気が来なかった。
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