湖の男とシャロットの女

「明田くん、それより、映画楽しみだね。」

「うん、日本で映画を観るのなんて初めてだから、とても楽しみだよ。5Dってなんだ？」

「4Dが座席が揺れるとか水がバシャッとかだから、5Dはそれを進化させて自分たちが劇場型の体験をできるやつ。まだ主役は任せてくれないけれどね。まさしく群衆(モブ)としての参加型体験だね。」

「へえ、どんなものか楽しみ。アーサー王物語の映画だったらさ、やっぱりランスロットになりたかったけど。」

「オーストラリアには5Dの上映をしている映画館はなかったの？」

「ああ、オレのお世話になったホームステイ先はとても田舎でね。近くに大きな映画館なんてなかったし、その町に唯一あった映画館は、古い映画を上映しているだけだった、おかげで古い映画には詳しくなったけどね。いつか観た、『Lancelot(ランスロ) du (デュ) Lac(ラク)(湖のランスロ)』という映画はとても最高だった。ほんとうに中世に迷い込んだかのような。」

「そうなんだね。それでランスロット好きになったんだね。」

「そうだね。ああ、そろそろ映画が始まる時間だ。急ごう！」