湖の男とシャロットの女

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「へー、面白い試みだね。これ、参加してみない?」  明田くんは簡単にそう言うが、たぶんオンラインサロンの会議は英語だろうし、とても難しいものになるだろう。受け手と言うが、そういうのに積極的に参加するのは、クリエイターの側の人間だろう。果たして自分自身は、クリエイターと名乗れるほどの人間なのか。 「なんか難しそうだし、ぼくはパス。」 「オレは、なんだか面白そうだし、参加してみようかな。映画を作れるんだよ。夢みたいじゃないか。」  そう言った明田くんの目はとても輝いていた。 「やっとさ、オレにも打ち込めるものができたかも。映画誘ってくれてありがとう!」 「明田くん、目標ができてよかったね! 応援するよ!」  ぼくが明田くんにそう呼びかけると、明田くんからこんな返事が戻ってきた。 「ありがとう。そういえば、夏樹(なつき)くんの目標って何かな? 君の打ち込んでいるものも、応援しなきゃ。」 「はは、気持ちは嬉しいけれど、ぼくには打ち込めるものなんてないんだ。」  いや、打ち込めるものがないなんてウソだ。ただうわっつらな言葉だけだと没個性的な人間だと思われてしまうおそれがあるから、答えたくないだけなんだ。
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