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すごく見られている。きっと、綿のようにフワフワしたブロンドも、地中海の色を取り込んだようなブルーの瞳も、この国ではまだまだ珍しいのだ。同じくワンピースに似た1枚布の服も。12、3才の少年ならなおさらだった。注目されるのは嫌いではないが、できればこんな気分の時は遠慮したかった。
一方で少年の方も男の容姿に注目していた。後ろで1つにまとめた黒髪に、見慣れない白と茶色の質素な服。まるで大昔のサムライみたいだと思ったが、それが合っているかは分からない。ハンサムな顔立ちは、東洋人であることを考えると30代かも知れない。
風がそよそよと吹いた。男はようやく少年に歩み寄ると、ちょっと首を傾けた。
「……この矢は君のだね? 『こすぷれ』かい、少年?」
「失礼な……じゃなかった、そうだよ」
うっかり口を滑らせるところだった。ドキドキしたが、男はそんな少年を気にした様子はない。
彼から矢を受け取った少年は、当然の流れでその鏃に視線を落とした。あんなこと、こんなこと。主に最近のいくつかの出来事が頭の中を過ぎって、胸が重たくなってくる。大きな石を飲み込んだらこんな感じなのだろうか。
「何か悩みごとがあるのか?」
「え? おじさん何で?」
「おじさん……顔に書いてあるよ」
穏やかな、そしてどこか沈んだ声でそう言われ、少年はごまかすように手のひらでゴシゴシと頬をこすった。男が「よっこいせ」と木陰の隅に腰を下ろしたので、こするのを止める。横から見ると、彼の黒髪は頭の後ろでクリンと輪になっていた。
人工芝とマリーゴールドの変わらないまぶしさに目がチカチカする。
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