Q&O 恋と縁とは奇しきもの

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 ある昼下がりのこと。  人々で賑わう大きな建物の人気のない屋上に、美しい少年が一人ふらりとやって来た。  敷き詰められた人工芝は青々とし、遊ぶような曲線に縁取られた花壇には、初夏の日を浴びた紫色のラベンダーやオレンジ色のマリーゴールドが可愛らしく並んでいた。そんな屋上で小さな木陰を見つけると、彼は力なくそこへ座り込んだ。白っぽい薄手の服に包まれた肌を人工芝がチクッと刺す。 「嫌んなっちゃうな、もう」  赤みの差した色白の頬を膨らませて、少年は言った。 「自分がこんなに役立たずだったなんて思わなかった」  ちくしょう。そう呟いた少年は全くの唐突に、持っていた弓でポイーンと矢を放った。矢は花壇の方へ飛んでいき――。 「うわあっ」  男の情けない声がした。  少年が驚いてそちらを見ると、無人だとばかり思っていた屋上に20代くらいの男がいた。自分が撃った矢を手に持っていて「ゲッ」と思う。 「やれやれ、今時こんな物騒なものにお目にかかるとは。一体どこから――」  男が急に立ち止まった。少年を見つけたせいだろう。2人は中途半端な距離でお互いに見つめ合った。  
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