ラブ・イズ・ブラインド

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 お昼休み。私――巴山(はやま)明佳(めいか)。中学二年生。女子。が本校舎と第二校舎を繋ぐ二階の渡り廊下に出ると、一人の女子がソワソワと落ち着きなく二三歩の間を行ったり来たり。制服のスカートをフワフワと揺らめかせている。  事情を知らない人が見れば変な子だけど、彼女は自分を待ちわびてくれているのを知っているので、私には微笑ましく見える。  お昼休み開始のチャイムとほぼ同時に、私のスマートフォンに、目の前の女子からLINEのメッセージが届いた。内容は「相談があるので、いつもの場所に来てください」。これは、いつものことだ。 「ごめん。待った?」  声をかけると、彼女はばっと勢いよく振り向き、パタパタと嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる。 「いいえ。ぜーんぜん。わたしも今来たところですよー」  彼女は私より身長が低いので、少し見上げつつ言う。  その姿に私はいつも小さい頃に飼っていたペコという犬を思い出す。いつも全身で喜びを表しながらじゃれついてきた。可愛い子犬。  ペコにしていたのと同じように頭を撫でたくなる衝動を、ぐっと堪える。そんな事をしでかしたら、きっと彼女に嫌われてしまう。  なにせ、私は彼女にとって頼りになる先輩なのだ。  彼女――冴木(さえき)永真(えま)は一年生で後輩。エマが入学当初、オリエンテーションとして二年生が新入生を学校案内するという行事があり、たまたま同じグループになって連絡先を交換して以来、何かにつけて頼られている。  私は当然、エマの姉では無いし、お母さんでも無い。学年も違う。私は吹奏楽部で、エマは美術部。部活も違う。先輩後輩以上の接点が何も無いからこそ、なんのしがらみもなく気軽に相談できるのかも。と、私は推測している。  懐かれて、慕われるのは悪い気はしない。むしろ、エマのような愛くるしい後輩になら、どんどん頼られたい。エマに頼られることは、私にしかできない役割なんだと、どこか使命感すら感じている。  エマからのLINEは相談の合図。連絡があればどこかで落ち合い、困っているエマの相談に乗る。内容は友達のことや、勉強のことといったり。ときには愚痴に近い内容も多い。  相談に乗ってあげると、エマはとてもキラキラした笑顔で喜ぶ。尊敬の眼差しを私に向けてくれる。それが、とても気分がいい。エマの困り事なら、四六時中いつでも助けてあげたいくらいだ。  ただ、先週くらいからは相談の内容が、少し面白くない。
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