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「久しぶりだな、小見」
大縄が目の前でしゃがみ、隼人に話しかけた。
『頼みたいことがあって』
「そーか、そーか、それより先に
先生の名前は大縄じゃなくて大橋な」
『そうか、悪い、大橋』
「ついでに先生もつけといて。
よし、それじゃ、時間もあるし少し話すか」
よっこらせっと立った大橋が奥の職員に聞こうと後ろを向いた。
「相談室借りて良いですか?」
大丈夫ですよーっと少し高い女の人の声が聞こえた。
『いや、すぐに帰るから』
「なんで」
じとりとした目で見られる。
『だから言っただろ、頼みあるって、それだけだから』
「…頼みって?」
腑に落ちないような不満そうな顔で問われる。
『教科書を全部渡してほしくて、6年までの』
「…はぁ……」
あからさまなため息をついた大橋がここじゃ邪魔になるなと言ってドアから少しはなれた場所に行き、またしゃがんで隼人の目を見て続けた。
「まだ3年だろ?まぁそろそろ4年ではあるけど…日本の小学校に飛び級制度はないんだよ」
『でも、3年のは全部理解したんだ』
焦りから責め立てるように反論してしまう。
「まぁまぁ、無理とは言ってない。
ただ少し小見が頑張ってくれれば、出来ないこともない。」
『頑張る…?』
「あぁ…でもまぁ、今日は帰ってご飯食べておねんねしろ。
さっきから腹の音凄いし、その代わり…
明日もう一度学校に来い、俺がいるときならいつでもいいから。
『…わかった』
よし。じゃ、また」
頭をわしゃわしゃと雑に撫でて、職員室へ戻る大橋を見届け隼人も家に帰った。
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