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男性警察官たちからの殿村の評判は可もなし不可もなしといったところなのだが、女性警察官や女性事務職員からの評判は酷いものだった。
これはと目星をつけた若い女性巡査や職員をあれこれ理由をつけて誘う。見境がない色情魔。
だが、実際に殿村から具体的な性被害を受けた女性警察官や女性事務職員は、俺が調べた限りではひとりもいなかった。身の程を知らぬ助平な五十代が若い女を誘って片っ端からフラれ続けている。ようするにただそれだけなのだ。実害がないのでは処分の対象にもならない。殿村が職を解かれていない理由だった。
ようするにモテぬ男の悪あがき。そういうことだ。俺はとことん考えさせられた。俺は三十五歳だが、二十年後には殿村のような五十代になっているだろうか。ああは決してなりたくないものだ。職場に毎年補充される若い女たちを目の当たりにして渇望し、悶々と過ごしていた殿村。いったいどんな手品を使ったのか、十九歳の事務職員本田明日香と交際している。寄る年波と共に失われたものを定年を目前に晴れて取り戻した。そんな思いだろうか。俺には殿村の考えがわからない――と言いたいところだが、実は痛いほどにわかるのだった。
男とは悲しいものだ。自らの老いを認めようともせず、いくつになっても若い女を求めたがる。俺も本音を言えば、十代の女と付き合えるものなら付き合いたい。
俺は自らの煩悩に蓋をして、聞き取り調査を続行した。
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