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自宅に戻ったときにはすでに日が暮れていた。また休日を潰してしまった。だが俺には署長から下された特命がある。俺は殿村の腹の底を暴きたかった。
翌日。本田明日香が無断欠勤した。殿村は見るからに青ざめている。
やがて殿村は動きを見せた。外出することを部下にほのめかし、行き先も告げず席を立った。
殿村は装備品管理室へ向かった。その理由は判然としない。確認する余裕もない。しかし殿村が拳銃を持ち出したのだということは容易に想像できた。警部以上の階級の者は自らの裁量で拳銃を装備することが出来る。俺はその権限を持ち合わせていない。拳銃装備の許可を求める時間的余裕はない。俺は丸腰のまま殿村を追う。
玄関を抜ける際に、本部の監察官二名とすれ違った。どちらも良く見知った顔だ。俺は過去の事件で犯人を射殺した際、捜査の違法性を疑われ監察対象となった。その縁で、本部の監察官たちとは顔馴染みだった。
今この時期に監察がA署を訪れた。最近の俺は大人しくしている。監察対象は俺ではない。となると、思い当たる理由はひとつしかない。捜査情報漏洩の件でいよいよ監察が動き出したのだ。
殿村は彼の愛車のスバルに乗り込み、署を離れた。俺は通り掛かったタクシーに飛び乗った。スバルは速度を上げてゆく。俺は運転手に警察手帳を示し、速度を上げるよう求めた。運転手は顔を強張らせながらも頷いた。
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