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意識を取り戻した僕が最初に目にしたのは、ファニアの青ざめた顔だった。
僕は、自分の家のベッドに横たわっていた。
戸惑う僕の目の前にて、ファニアの瞳は涙で満たされていった。
ファニアは横たわる僕へと抱き付き、わんわんと号泣し始めた。
戸惑う僕の耳にロッシュさんの声が響き入る。
「良かった、目を醒ましたか。
一週間も眠りっぱなしだったから、ファニアは寝ずにずっと看病していたんだぞ」
僕は声のほうを見遣る。
そこには、頭の半分を包帯で覆い、そして右腕を吊ったロッシュさんの姿があった。
ロッシュさんは言葉を続ける。
「あの大猿を何とか始末して、そして祈りの部屋に入ったら、お前がぶっ倒れていてさ。
なんとか担いで戻ってきたって訳だ」
僕の心に不安が過ぎる。
果たして、僕の祈りは神に届いたのか、との不安が。
そんな僕の不安を見て取ったのか、ロッシュさんは微笑んでこう告げた。
「大丈夫だ。
俺があの部屋に入ったとき、頭の中に声が響いたんだ。
『この者の願いは我に届いた。
この者の祈りで我は目覚めることが出来た。
感謝する』
ってな」
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