第7章 騎士団の体験訓練

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 集中力が高まれば高まるほど相手の動きがゆっくりに見える。  相手の目の動きや体の動き、足の向きを見て、次にどういう攻撃を仕掛けてこようとしているのか、その意図までも見えてくる。  いつも必要以上に重たいドレスを着ているわたしにとって、今日のシャツとズボンにブーツという軽装は動きやすくて体が軽い。  楽しいっ!  しかし、夢中になって避けているうちに壁際へと誘導されていたらしい。  コツンと後頭部と背中にレンガに当たる感触がして初めてそのことに気づいた。  しまった、あまりにも楽しくて避けることだけに夢中になりすぎたわ!  目の前には木刀を頭上に振りかざしてニヤリと笑うコンドルがいる。 「もう逃げられねーぞ、世界中のコンドルに謝りやがれっ!」  そんなコンドルの脛めがけて、手首にスナップをきかせて木刀を打ち付けた。 「イテテテッ!」  あっけなくコンドルが膝から崩れ落ちて木刀を放し、脛を抱えている。 「卑怯だぞ、攻撃してくるだなんて!」 「攻撃せずに避けるだけなんて、ひと言も言ってないけど?」  周りがやけに静かなことに気づいて視線を向けると、学生と指導官全員が遠巻きにしてこちらを見ていた。  木刀を大きく振り回すコンドルと逃げ回るわたしの邪魔にならないよう、場所をあけてくれていたらしい。 「おい、赤毛!次は俺が相手になる!」  木刀の打ち合いの訓練のはずが、それは訓練場の半分だけで行われ、残り半分のスペースではなぜか「赤毛に一発食らわせろチャレンジ」大会が始まった。  一対一というところが、彼らの育ちの良さを示している。  ちなみにわたし、「赤毛」じゃなくて「アーシャ」だからね?
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