第1章 馴れ初め

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第1章 馴れ初め

 どうしてこうなってしまったんだろう。  わたしたちは、上手くやれていたと思う。  彼女が来るまでは――。  わたしとレイナード様が婚約したのは、ともに10歳のときだった。  わたしの父の家系であるビルハイム伯爵家は代々「王国の盾」と呼ばれる国王陛下を警護する騎士団の団員を務め、騒乱の時世では多くの勲功者を輩出した「脳筋家系」だ。  騎士団長である父が国王陛下の警護で帰宅できないことが多いため、母について父の着替えや差し入れを届けに王城へと足を運ぶ回数が多かったわたしは、同い年で陛下の第一子であるレイナード様とも自然と顔見知りになり、仲良くなった。  おこがましいとお叱りを受けるかもしれないが、いわゆる「幼馴染」というやつだろうか。  幼い頃のわたしは家系譲りのおてんばで、王城の中庭のリンゴの木に登って果実を盗み食いしたり、池に飛び込んで泳いだり、ヘビを捕まえて振り回して遊ぶような、とても伯爵家のご令嬢とは思えないような子供だった。 「シア、やめたほうがいいよ。怒られるってば!」 「大丈夫よ、レイ」  レイナード様は幼いころから聡明でお行儀が良くて、わたしのイタズラやおてんばに一度も協力したことがなかったにもかかわらず、一緒にいたという理由だけでいつもわたしと一緒にお説教を受けてくれた。
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