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広間でダンスが始まると、わたしはレイナード様のエスコートで意気揚々と中央に陣取った。
「レイ、今日は飛ばすわよ」
「望むところだ、シア」
不敵な笑みを交わし合ったわたしたちは、曲が始まると同時に大きく回転し、フロア中を縦横無尽に動きながらクルクルと回り続けたのだった。
どんなに回転しても笑顔を絶やさず、体もブレないレイナード様はさすがだ。
楽しくて、このままずっと一緒に踊り続けたいと思ったところで曲が終わってしまった。
最後の思い出にレイナード様にダンスを申し込もうと、すでに待ち構えている女子たちがいるため、すぐに離れようとしたのに逆に腰をグイっと引き寄せられた。
「シア、もう一曲踊ろう。今日もきみが一番綺麗だよ」
耳元で甘く囁かれて、ドキッとしながら頷いた。
同じ相手と何曲も踊るのは、二人の親密さを周囲にアピールする行為だ。
わたしはレイナード様の婚約者なのだから当然ではあるのだけど、嬉しさと気恥ずかしさが込み上げてきて、もしかするとドレス以上に真っ赤になっていたかもしれない。
二曲目は少しゆったりと踊り(それでも後でリリーに「あんたたち、二曲もグルグル回り続けてどうなってんの!?」と呆れられたけれど)順番待ちしている女子たちにレイナード様を譲ったのだった。
飲み物を取りに行った先でコンドルが友人たちと談笑しているのが見えた。
「コンドル!ねえ、最後にわたしと踊らない?」
「冗談じゃねえ、あんなにグルグル回ったら絶対に死ぬ。あの王子様はどうなってんだよ、俺ちょっと見直したかも」
どうしてみんな、そんなことを言うのかしら。
ここへ来るまでに、カインとリリーには呆れられ、ルシードには怯えられ、マーガレットには驚かれた。
皆一様に、レイナード様のことは「すごい!」「さすが!」と称賛するくせに、一体どういうことなんだろうか。
わたしからすれば、昨日グリフォンに乗って空から降りてきたコンドルのほうが「どうなってんの!?」だ。
その様子を見ていた生徒たちに「あいつ、ついに人間やめたんだな」って言われていたことをバラしてやろうかしら。
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