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「残念だわ、もう最後なのに」
「最後じゃねーし。また遊ぼうぜ、赤毛」
コンドルがくしゃりと笑った。
もちろん!約束よ!と言おうとして前のめりになったわたしの肩に大きな手が置かれて、驚いて振り返るとそこにレイナード様が立っていた。
「コンドルくん、歓談中にごめんね。シアを返してもらうよ」
レイナード様はにこやかに笑っているようでいて、目が全然笑っていない。
「どうぞお幸せに」
苦笑するコンドルに「またね!」と手を振っていると、「まったく、ちょっと目を放すとこれだから」というレイナード様のつぶやきが聞こえた。
「レイ?順番待ちのお嬢様がたは?」
「シア、次がラストダンスだよ」
あちこちでおしゃべりしているうちに、いつの間にか随分と時間が経っていたらしい。
広間にゆったりとしたテンポのムーディーな音楽が流れ始めた。
カインとリリー、そしてルシードとマーガレットもぴったりくっついて、音楽に合わせて体を揺らしている。
「一緒に踊っていただけますか?」
レイナード様がおどけた様子で手を差し出してきた。
「よくってよ」
お高く留まった悪役令嬢っぽく顎をツンと上げてそう答え、レイナード様に手を重ねると、わたしたちは再び意気揚々と広間の中央へ向かったのだった。
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