第1章 馴れ初め

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 子供の頃のレイナード様は小柄で、わたしのほうがはるかに体格がよかったし、家柄的本能からか「レイのことはわたしが守る!」と常々思っていた。  そして、王城をこっそり抜け出して(もちろんレイナード様は反対したけれど、わたしが強引に連れ出したのだ)城下町に遊びに行った日のことだった。  その日は大規模なバザールが開かれていて、露店でお菓子を買ったり髪飾りを見たりと夢中になっているうちに帰りが遅くなってしまった。  日が傾いて空がオレンジ色に染まりかけていることに気づいたわたしたちは「しまった!」と顔を見合わせ、森を抜ける近道で王城まで戻ることにしたのだ。  我が国は緑地や森、小高い丘や山が多くある自然豊かな国だ。  普段、長兄・次兄とともにこの森も遊び場にしていることもあって、勝手知ったる場所のつもりだったのだけれど、この選択が失敗だった。    森に生息する吸血コウモリは、明るいうちは活動しないし、おとなしい性格のため普段は出くわしたとしても向こうから積極的に襲ってはこないのだけれど、森に着いた頃にはすでに彼らの活動が始まる時間帯になっていたこと、そして運悪くその季節が吸血コウモリたちの繁殖時期にあたり、子供を守るために彼らの気が立っていたことに、子供だったわたしたちは気づかなかったのだ。
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