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ちょうどわたしたちを探していたメイドと森の外で出くわしたとき、メイドは怒るよりもギョッとして言葉を失っていた。
わたしは自分自身がどのような状態だったのか知らなかったけれど、手足だけでなく頭や顔からも血を流し、それでも笑って歌いながらレイナード様の手を引いて森から出て来たのだと後から聞いた。
その場に、騎士団の仕事で忙しいはずの父まで駆けつけてきて、その姿を見た途端、緊張の糸が切れたようにわたしは気を失ってしまったのだった。
目を覚ました時、わたしは自分の部屋のベッドに寝かされていた。
なんだろう?全身が熱っぽくて、むずがゆい。
腕に巻かれている包帯を見て、吸血コウモリの群れに襲われたことを思い出した。
ああ、失敗しちゃったな。
レイも今頃、うんと叱られているんじゃないかしら…。
起き上がったタイミングで、二人の兄が部屋に入って来た。
「なんだ、起きてるじゃないか」
「お父様がオロオロしてるから死ぬのかと思ったぞ?おてんばもほどほどにしておけよ」
どうやらみんなに心配をかけてしまったらしい。
当時レオンは17歳で、全寮制の高等学院に在学していたために自宅にはいないはずだったのだけれど、わたしが大怪我をしたと聞いてわざわざ駆けつけてくれたのだろう。
「ごめんなさい…」
しゅん、となって謝ると、長兄のレオンがそっと優しく抱きしめてくれた。
「エライぞ、ステーシア。レイナード王子をよくぞ守り切ったな。それでこそビルハイム家の騎士だ!」
ビルハイム家の騎士――長兄のその表現に心が躍った。
レイナード様をお守り出来てよかったと心から思った。
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