閑話 レオンの恋

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 来客の合間に交わされるわたしたちの会話を無言で聞きながら、レオンは紅茶を飲んでばかりだ。    カフェスペースはテーブルひとつに椅子が2脚という1組分しかなく、ここを営業時間中ずっとゴリラのような騎士が占領しているとなると、本格的な営業妨害だと思う。 「いや、ちゃんとおかわりの分の代金も払っている」  ちがうでしょ!そういうことじゃないでしょ!  お客さんが寄り付かなくなるって話よ! 「レオン様が居てくださると、とても助かるんです。その…対応に困るお客様がたまにいらっしゃったりするので。いつもありがとうございます」  マリアンヌがそう言ってはにかんだように笑うと、レオンは真っ赤になった。 「騎士としての務めですから」  何言ってんの!  好きなんですって言いなさいよっ!  訓練でわたしに向かって「妹じゃなきゃ惚れてる」って挑発してきたあの太々しい態度とは大違いだわ!  第一印象としては、マリアンヌもレオンに好意を持っている気がする。  この店に入った時に、マリアンヌはわたしとレオンが仲良さげに話しているのを見て、とても悲しそうな顔をしたのだ。  わたしたちのことを恋人同士だと勘違いしたのかもしれない。  だから「兄がいつもお世話になっています」と頭を下げると、マリアンヌの顔は途端に、蕾が一気に開くようにほころんだ。  つまり、まどろっこしい駆け引きはいらないと思うの。  こんな可愛らしくてお菓子作りも上手な気立てのいいお嬢さんなんだもの、狙っている男は大勢いるはずだわ。  だから早く手を打たないといけないっていうのに。  レオンお兄様って恋愛に関してはヘタレなのねえ…と呆れながら、マリアンヌに提案してみた。 「一番簡単なものでいいから、わたしにお菓子作りを教えていただけないかしら。できれば、わたしの自宅の方で。もちろん、出張費もレッスン料もお支払いします!」  婚約者と倦怠期で相手の心が離れていきそうだから、手作りのお菓子でもプレゼントしてみようかと思っていると、話を盛ってみた。  本当はもう婚約破棄寸前なのだけれど。 「そういうことでしたら、いつもレオン様にもお世話になっていることですし、わたしも協力します。ちょうど明日がお店の定休日なんですけど、ご都合はいかがですか?」  兄は明日まで「お疲れ休み」だ。  やった!大チャンスよっ! 「ありがとう!是非是非お願いします!」
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