第1章 馴れ初め

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 しかし、褒めてくれたのは兄たちだけだった。  父からは大目玉をくらい、母は、首の噛み痕が化膿してひどい炎症を起こしているから一生残る傷になるかもしれないと嘆いて泣いていた。  それでも、親からの大目玉は慣れっこだったし、母にはナイショだけどほかにも木登りをしていて折れた枝と共に落下した際に、その細い枝先が刺さった痕がお尻に残っていたりもする。  炎症のせいでそのあとしばらく高熱が続き、部屋から出られるようになったのは2週間後のことだった。  その間、レイナード様のお名前でお花やお菓子が我が家に届くことが数回あり、一回だけだったけれど『具合はどうですか。心配しています』という手書きのお手紙が添えられていた。  熱が下がってからすぐに返事を書いた。  高熱で寝込んでいたことや、痕が残ると言われている化膿した傷が今はかゆくて仕方ないことなどは、さすがのわたしでも書くわけがない。  わたしはレイナード様をお守りする騎士なのだ。  『心配ありがとう。わたしは元気です。レイに会いたいです』と書いて母に言づけた。  しかしその翌週、わたしはレイナード様の騎士ではなく、なぜか婚約者になってしまったのだった。
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