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何も聞かされていなかったわたしは当然のごとく驚いて固まってしまい、それに見かねた長兄がそっと耳打ちしてくれた。
「謹んでお受けしますって言え」
「え?…つつ?」
「謹んで!」
んんっ、と小さく咳払いしたにも関わらず、完全に声を上ずらせながらどうにか言った。
「謹んでお受けします、レイナード様」
レイナード様はホッとした様子で立ち上がるとふわりと笑った。
「これからもよろしくね、シア」
わたしは不覚にもその顔に見惚れてしまって心臓が破裂しそうになり、帰りの馬車で「どうしよう、せっかくレイの婚約者になったのに心臓がおかしい!わたし死ぬかも!」と大騒ぎしてしまった。
すると母は優しく微笑みながら教えてくれたのだった。
「ステーシア、死んだりしないわ。それは恋よ」と。
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