酒言葉は「無駄な事」

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酒言葉は「無駄な事」

「笑うのに疲れた」「笑い方を忘れた」 最後に心の底から笑ったのがいつか分からない。 酒を片手に嘆く私に彼女はうっそりと笑う。 「なら、なんで今口角は上がっているのかしら」 弧を描いた唇からこぼれた問い掛けに、私は思わず目を見開いて口元を触ってみた。……成程、緩んでいると言うよりは痙攣しているが、確かに上がっている。 「あなたはいつでも嘘吐きね」 ぽたぽた、と頬から伝った雫が机に落ちる。 「疲れたらいつでもここへ来なさい。苦笑いだろうと痛みを耐える笑いだろうと、それは心からの笑いよ」
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