その腕が、もう

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その腕が、もう

私ん家はその頃めちゃくちゃだったから、親友みたいに「楽しいラブラブなお付き合い」とやらには全然程遠かったと思うのだけれど、家に帰れない時やら帰りたくない時なんかに、部屋に置いてもらえるだけでも助かったし、適当に色んなことを教わったと思う。 先輩に拾われたことも、どういう関係かも、親友が楽しそうに話していたり、知りたがるような「男とのお付き合い」ってやつも、私は何ひとつ、誰にも話さなかった。 そんで、そん時の私が知ったことはたったひとつだけ。 この先輩んとこに居れば、他に居場所がなくてもなんとかなるってこと。 でもまあ、そういうそこそこ忙しい年上の先輩からしたら、私みたいなガキんちょの感傷なんか伝わるわけなんてないわけで。 って言うか、伝わったからと言って、付き合う義務はないわけで。 それはもう、あっさりと。 本当にある日突然、「家の鍵返してもらっていい?」ってそんな感じで。 終ったりする。
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